轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くうしゅうけいほう
空襲警報
海野 十三
「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页
帝都は間近し
「助けて、た、たすけてえ」
と、ひどくしゃがれた声が……。
室内の人たちは、一せいに入口の方に眼を注いだ。毛布の幕の聞から、ゴロリと転げこんできたのは、スポーツマンらしい大きな男だったが、顔色は紙のように白く大きな口をあけてあえぎながら、両手でしきりに咽喉のところをかきむしっていた。まさしく、毒瓦斯に中毒していることが一眼でわかった。鍛冶屋の大将はまっさきに立ちあがって、その男のそばにかけつけた。
「た、助けてやって、くれたまえ。こ……後車は毒瓦斯がたいへん、だッ……」
とまでいうと、彼ははげしく咳いった。
鍛冶屋の大将は、
「よォシ、助けてやるぞ」
と叫ぶなり、一座を見わたして、学生を五人ほど指名した。
「さあ、あの防毒壜をくわえて、助けにゆくんだ」
旗男も、防毒面を被りなおした。
学生たちは、鼻の穴に思い思いの栓をした。或者は、消しゴムを切ったものをつめたり、また或者は万年筆のキャップをつっこんだり、それから、また或者は一時の間にあわせに、綿栓をこしらえ唾でしめして鼻孔に挿した。
そうしておいて、鍛冶屋の大将を手本にして、防毒壜を口にくわえた。