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まどにさすかげ
窓にさす影
豊島 与志雄
「小説公園」1952(昭和27)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,068 字 · 26 页
」
利光さんは言った。
「その意見には僕も賛成だな。だから、銅像を作ったり、記念碑を建てたりするのは、愚劣なことだ。墓もいらん。遺骨を粉々にして、空中から撒布すればいい。農作物や樹木の肥料になるし、気持ちもさっぱりするだろう。人間がその粉を吸ったところで、肺病の薬になるぐらいなもので、別に害はないだろう。」
「ずいぶん野蛮な話になってきたね。美佐ちゃんは祖母のペットだったが、どうだね。」
兄は私の方を見やった。私は露骨に眉をしかめてみせた。
「そんな唯物主義は、あたし大きらい。」
「これは驚いた、唯物主義ときたね。然し、唯物的理想主義というものもあるよ。」
「あたしは、精神的理想主義……。」
「だいたい、女は理想主義で、そして男は、当面の問題を処理してゆけばいい。そんなところで妥協しないかね。」
「まるであべこべじゃないの。」
私は忌々しくなって、ビールをぐっと飲んでやった。
「第一、お祖母さまの初七日なのに、故人のことを忘れるとか忘れないとか、そんなことがよく言えたものだわ。」
「一般論をしているんだ。なんだい、べそをかくなよ。」
利光さんは笑った。
「そんな議論より、僕がいい所へ連れてってやろうか。