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だいよじげんのおとこ
第四次元の男
海野 十三
「ユーモアクラブ」1940(昭和15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,156 字 · 18 页
恐しい病気の再発に似たわたくしの悲しみだった。白石君の言は、たった三日たらず、わたくしをよろこばせてくれたに過ぎないのであった。わたくしは、再び暗黒の無限地獄へ、真逆さまに墜落していく。一体どうしたことであろうか。人間の身体が、全然見えなくなるなんて……。
相手の錯覚ではないようだ。相手を幾人かえても、見えないときは矢張り見えないのであった。わたくしは恐怖に戦慄しながらも、なぜそうなるのであるかと、ひそかに好奇心を湧きあがらせた。だが、その答は、にわかには出て来なかった。
わたくしは、そのような呪わしい身の上を、余人に語る気はなかった。もしもそんなことをすれば、わたくしは忽ち興行師に追いかけられ、さあ見ていらっしゃい、お代は見てのお帰り――の見世物になってしまうことであろう。わたくしは、あくまで普通の人間でいたかった。
さりながら、いつまでたっても未解決のそのままで、じっとしているわけにもいかないので、わたくしは、藤田師を煩わして、わたくしの人相を見てもらった。もしや何か異様ある人相が現われていないかしらと、思ったのである。
すると、藤田師は御自分の皺が、隅田川のように大きく見える天眼鏡をもって、わたくしの顔を穴のあくほど見ていたが、やがて彼は、俄かに愕きの色をあらわし、おそろしそうに身を引いた。