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だいよじげんのおとこ

第四次元の男

海野 十三

「ユーモアクラブ」1940(昭和15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,156 字 · 18 页

青空文庫

なぜ、あの夜に限り、わたくしの姿が、あの人々には見えなかったのであろう。

わたくしは、そのことを、仲のいいわたくしの友達で、白石君というのに話をした。但し、わたくし自身の身の上話をしないで、第三者の話のような角度でもって語ったのだった。

すると、その白石君は、ふふんと鼻で笑い、

「それは、分っているさ、別にその人(実はわたくしのこと)の身体が見えなかったわけじゃないのさ」

「えっ?」

「つまり、あんなところで密会している若い男女にとって、向うから突き当ってくるその人は、不気味な恐ろしい人物と見えたので、そこで触らぬ神に祟なしのたとえのとおりで、見て見ぬふりをしたというわけだ。つまり、その人を怒らせて、物事をあらだてては、二人の大損だからね」

「ふーん、なるほど。そうだったか。はははは」

「なにがおかしいんだ。へんな男だ」

白石君は怪訝な顔をして、わたくしを見つめたが、わたくしはうれしくてたまらなかった。

ところが、そのよろこびは、ものの五日とつづかなかった。或る夜、また新宿からの帰途、例の戸山ッ原にさしかかったとき、全く同じような目にあった。つまり、わたくしの姿が、またもや全然認められないのであった。