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かんざしをさしたへび
簪を挿した蛇
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」1946(昭和21)年12月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,681 字 · 20 页
余り得な方法ではないが、どうにか外国の進歩にくっついて行くことも、努力さえすれば可能である。そして現にそれは或る程度まで可能であったのである。
しかし今日では事情は一変した。以前のような意味での科学は、影が薄くなったわけである。国防の問題はなくなったが、民生的な近代機械文明を建設する意味で科学技術は必要である。しかしその基礎としての科学というだけでは、非常に影の薄いものであることは事実である。終戦後の日本の科学振興とか科学再建とかいうものが、何を意味しているかは、誰に聞いてみてもよく分らないようである。私自身にも分らない。むしろこの際科学など止めてしまった方がよいのではないかとも考えられるが、政府の方で科学再建を唱えられる以上、それに協力しないわけにもゆかない。しかし同じ協力をするのならば、意味のある協力をしたいものである。
ところで今後の日本において、意味のある科学を振興させようと思えば、本来の姿においての科学を進歩させるべきであろう。科学が戦争の役に立つのは事実であるが、それは科学の本然の姿ではない。科学は自然と人間との純粋な交渉であって、本来平和的なものであるからである。