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べにすずめ
紅すずめ
小川 未明
「早稲田文学」1921(大正10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,210 字 · 9 页
また、あるときはしらさぎにまじって、風の吹く日に、そして、海の上が暴れて、どちらを見ても黒雲がわきたつような日に、波を切って中空にひるがえることを学んだのです。
春、夏、秋、冬というふうに、三年の間、あわれなすずめは海の上で、しらさぎや、つばめや、また寒い国から渡ってきたいろいろな鳥などと、交わって暮らしました。その間には、緑色に空が晴れて、その下に大きな海が、どさりどさりと物憂げに波を岸辺に打ち寄せて眠っているような、穏やかな日もあったのです。そのような美しい景色は、とても野原や、林や、田圃などを飛んでいた時分には、すずめに見ることのできなかったいい景色でありました。
また、夏の晩方には、日輪が真っ赤に、大きな火の球の転がるように海の中へ音もなく沈んでゆくこともありました。このとき、小さなすずめは、その昔、あの日輪に綱をつけて、からすや、こまどりや、いろいろの鳥らが引いて、深い暗い谷底から、日輪を引き上げたことを思い出しました。すると、こまどりの唄をうたった、あのいい音色が耳に聞こえるような、また、笛や、太鼓や、笙の音色などが、五彩の美しい夕雲の中からわいて、海の上まで聞こえてくるような、なつかしい感じがしたのであります。