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こうもうけいせい
紅毛傾城
小栗 虫太郎
「新青年」1935(昭和10)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 页
それから、床着の黄八丈を着て、藤紫の上衣を重ね、結んだしごきは燃え立つような紅。そのしどけなさ、しどけなく乱れた裾、燃え上がる裾に、白雪と紛う腓。やがて、裲襠を羽織ったとき、その重い着物は、黄金と朱の、激流を作って波打ち崩れるのだった。
こうして、フローラに太夫姿が整えられると、悩ましかった過去の悪夢も、どこかへ消え去ってしまった。
彼女は、二つの世界の境界を、はっきりとまたぎ越えて、やがて訪れるであろう恋愛の世界に、身も世もなく酔い痴れるのだった。
けれども、翌日から彼女を訪れるものは、やはり横蔵であって、慈悲太郎は、自分から近づくような気振りを見せなかった。それが、フローラの影法師を抱きしめて朦朧とした夢の中で楽しんでいるように見えたのである。
「のうフローラ、そなたとこうして、恋のはじめの手習いをするにつけて、つくづく近ごろは、沖に船が、通らねばよい――とのみ念ずるようになった。したがそなたは、儂の髪ばかりを梳いていて、なぜにこちらを向いてくれぬのじゃ。察してくりゃれよ。日がなそなたの呼吸を、首ばかりでのう、嗅いでおる儂をな」
と、横蔵が、恨みがましい言葉を口にしたように、何よりフローラは、彼の艶々しい髪の毛に魅せられてしまったのだ。