轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

もんつきをきるのき

紋付を着るの記

吉川 英治

「東京新聞」1960(昭和35)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,454 字 · 5 页

青空文庫

の礼をしない事には下駄をはかない風だった。そんな両親なので、正月の年礼にはぜひ息子にも紋付を着せて外へ出したい念願であったのだろう。もちろんその一着を用意するためには、母も父も日頃のものをチマチマと長いあいだ節約しておき、そしてさて、さだめし私がよろこぶだろうと期待していたにちがいない。

ところが、私も明治の子であるのだが、着物で好きなのは紺ガスリで、あのりゅうとした紋付などは、以てのほか、嫌いだった。第一正月そんな物を着て出た日には、悪友たちとのツリ合いも悪いし、吉原へ行っても目立つ。……そんな不逞もひそんでいたし、いまとなれば恥かしい慢心だが、家の家計を負っているのは自分だという生意気な驕もあった。紋付を作る金があるならほかの事に費えばいいにと、母にまで当りちらしたものである。父はさんざん私へむかって、礼儀礼服の大事をいいきかせていたが私がきかない色なので、ついに持ち前のかんしゃくを起し『じゃあ勝手にしろ。どうしても着ないな』と、念を押すので、私もつい『ええ、着ません。その日暮らしで紋付もないもんだし、自体嫌いですから』『よしっ、着るな』『着ませんとも、一生着ない!』