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けっこん

結婚

中 勘助

「朝日評論 第一巻第一号」朝日新聞社、1946(昭和21)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,520 字 · 11 页

青空文庫

で、今度はひとつ本人同士の間をあらましきめてからぶつかってみようという相談だったのだ。とかくして話は切り出された。が、案のごとく石橋主義だ。ところが私がある理由から永年一般に親類づきあいをしないため文枝さんは私についてお父様を満足させるほどの説明をすることができない。そこへこちらは「出来るだけ早く」だ。ああこうの末が一場の悲喜劇となって破局の手前にまで達したらしい。しかし文枝さんが私をよく知らないと正直にいってくれたのは私の幸運だった。従来親戚の間の評判のよくない私、妄想や、誤解や、曲解や、悪意や、敵意から、偏屈、一刻、怠惰、吝嗇、貪慾、等、等、勝手放題な悪名をばらまかれた私である。いい加減なことをいわれてはたまらない。お友達のほうでは心当りを聞合せた。その結果は 調べたところ万事吉報ゆえ一日も早く話をお進めなさい というのと、酒の席で自分は膝を崩さずにいながら人をそらさないような人だ という報告だったそうだ。かたわらお父様は「沼のほとり」を読み、特に「孟宗の蔭」のなかの私が妙子を可愛がるところに打込んで 今度こそ私の心はきまった と事は一遍に落著してしまった。