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けっこん

結婚

中 勘助

「朝日評論 第一巻第一号」朝日新聞社、1946(昭和21)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,520 字 · 11 页

青空文庫

世は様ざまだ。それを読んで私を非難する人もあるかと思えばそのために大事の娘をくれる人もある。

式は秋ときまったがそれまでにも始終手伝ってもらいたい。それにつけても一度先方の人たちに逢っておくことが望ましいのでその日どりを打合せるうちにも目前の必要に迫られて幾度かきてもらった。いちばん困るのは兄の身につける物の世話だった。それを頼む時に私は

「兄は私より身なりが悪いと気にするからなるべくいいのを著せてあげてください」

といい含めておきながらじきにそれを忘れてしまった。間もなくある日のこと、茶の間で食卓の向うに坐った兄がひどくぴかぴかするものを著てるのを見て私は家政婦さんが手当り次第に出したのだと思い

「大層いい物を著ましたね」

といったら兄は指で輪をこしらえ目へあてがって これが出してくれたのだ といった。

お友達は眼鏡をかけている。私は そうだったのか と思って

「そりゃよござんしたねえ。いい人ですよ」

といったら 我意を得た という様子をして見せた。そうしてるうちにわかったのはそこにまるで八犬伝式因縁が絡みあってることだった。文枝さんの母親――私の実の姉はいうまでもない。