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ぬいこ

縫子

宮本 百合子

「新潮」1926(大正15)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,962 字 · 20 页

青空文庫

うっかりお嫁にやれば私に考えがあるようにとって喧しい人が出て来ますし、養子して跡立てさせるとしたところが、養子は養子でまた難しいものですしねえ。財産でもあってのことなら何ですけれど……」

という意味であった。なみは気の平らな二度目の母親としては珍しい女であった。彼女はただあまり平らかな気持すぎて縫子のことを話すのでさえどこやら永年世話したお針子の一人のことでも話すと同じようなところがあった。

翌日、縫子は思いがけないきっかけで床を離れることになった。

四時頃登美が学校から帰って来た。

「あら、姉さんまだ寝てるの」

制服姿で、母親のなみに似て色こそ黒いが釣合のよい体つきで荷物を机に置いた。

「お起きなさいよもう。――どこも悪いんじゃないんじゃないの、私狭くって困るわ」

縫子は力のない声で抗った。

「頭が重いのに――放っといて」

云われるまでもなく姉にはそれ以上かまわず、登美は茶箪笥の前へ蹲んだ。

「なあにかないか――おや――素敵!」

彼女は小丼に一杯きんとん煮にした甘藷を発見したのであった。

「お昼に煮たの? 姉さん沢山食べたんでしょ」

冷かしながら、登美は早速箸を持ってきた。