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わなにかかったひと
罠に掛った人
甲賀 三郎
「探偵」駿南社、1931(昭和6)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,112 字 · 21 页
二
通りは歳晩の売出しで、明るく且つ賑かだった。飾窓にはいろいろと贅沢な品が並べられて、そのどれもが、友木が一月に一度も手に入れる事の出来ないような金額の定価がついていた。十一時近かったけれども、空風に裾を捲くられながら、忙しそうに歩き廻っている人で群れていた。
友木はこう云う人々の間に交って、身装が少し見すぼらしいと云う以外に、人目を惹くような特徴は示していなかった。彼の多少殺気立っている顔色も、年の暮を足を棒にして歩き廻っている人々には、少しも注意を惹かなかったのだった。彼も亦年の暮を忙しそうに歩いている一人としか見えなかったのは彼にとって仕合せだった。
彼自身は然し、始終何者かに追かけられる気持だった。鳥打帽子を眉まで被って、屈み加減にどんどん歩いて行った。
玉島の家は薄暗い横丁にあったが、夜用のない商売とて、年の暮と云うのに、もうすっかり門を閉じて寝静まっていた。
友木は玉島の家に近づくと、四肢が妙にブルブル顫え出して、唇が異様に渇いて来た。彼はうろうろと門の前を二三回往復した。
戸を叩く勇気はなかった。何かの口実で彼に会う事は出来るとしても、素手ではどうする事も出来ない。