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びみほうだん

美味放談

北大路 魯山人

「星岡」1935(昭和10)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,841 字 · 16 页

青空文庫

とにかく、世間とはぜんぜんお膳立が違う。見識が違う。さもなければ天下の名士が無意味な金を出しますか。金の有効な使い道を知っている紳士達だ。利益ずくじゃないってことはこれでも分る。大阪の方でも、東京の星岡の十年間のことを認識しているからね……通常の考えとは頭が違う。それを自分に頭のない者は、星岡というものを競馬にでも当たった当たり屋のように取っている者がある……まぐれ当たりは十年後いよいよ栄えるわけにはゆかん。しかし、見る者はそうでも思っていないと、自分達が安心出来ないからねえ。

とにかく世の中には、酢でもこんにゃくでも食えないように鋭い商人があるが、星岡はそうじゃない。時に酢でもこんにゃくでも食えないように大坊ちゃんだ。昔武士が「尋常に勝負」といって立ち向かうが、あの真剣な態度が星岡だ。大坊ちゃんの仕事だ。さもなくば名士が相手にならないよ。こんなことはひとがいうことだけれども、誰もいわないから僕がいうんだ。半分だけみて、坊やとあなどると失敗するよ。むずかしい大坊ちゃんだ。そういう意味において、豊臣秀吉なんかも酢でもこんにゃくでも食えない大々的な坊ちゃんらしい。