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びしょうじょ
美少女
「月刊文章」1939(昭和14)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,623 字 · 11 页
塩からかった。鉱泉なのであろう。そんなに、たくさん飲むわけにも行かず、三杯やっとのことで飲んで、それから浮かぬ顔してコップをもとの場所にかえして、すぐにしゃがんで肩を沈めた。
「調子がええずら?」指輪は、得意そうに言うのである。私は閉口であった。やはり浮かぬ顔して、
「ええ。」と答えて、ちょっとお辞儀した。
家内は、顔を伏せてくすくす笑っている。私は、それどころでないのである。胸中、戦戦兢兢たるものがあった。私は不幸なことには、気楽に他人と世間話など、どうしてもできないたちなので、もし今から、この老爺に何かと話を仕掛けられたら、どうしようと恐ろしく、いよいよこれは、とんでもないことになったと、少しも早くここを逃げ出したくなって来た。ちらと少女のほうを見ると、少女は落ちついて、以前のとおりに、ふたりの老夫婦のあいだにひっそりしゃがんで、ひたと守られ、顔を仰向にして全然の無表情であった。ちっとも私を問題にしていない。私は、あきらめた。ふたたび指輪の老爺に話掛けられぬうちに、私は立ちあがって、
「出よう。いっこうあたたまらない。」と家内に囁き、さっさと湯槽から出て、からだをふいた。