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びしょうじょ
美少女
「月刊文章」1939(昭和14)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,623 字 · 11 页
私は気が狂いそうになった。髪を思い切って短く刈ったら、少しは頭も涼しくなり、はっきりして来るかも知れぬと思い、散髪屋に駈けつけた。行きあたりばったり、どこの散髪屋でも、空いているようなところだったら少しは汚い店でもかまわないと、二、三軒覗いて歩いたが、どこも満員の様子である。横丁の銭湯屋の向いに、小さな店が一軒あって、そこを覗いてみたら、やはり客がいるような様子だったので、引き返しかけたら、主人が窓から首を出して、
「すぐ出来ますよ。散髪でしょう?」と私の意向を、うまく言い当てた。
私は苦笑して、その散髪屋のドアを押して中へはいった。私自身では気がつかなかったけれど、よその人から見ると、ずいぶんぼうぼうと髪が伸びて、見苦しく、それだから散髪屋の主人も、私の意向をちゃんと見抜いてしまったのだ、それにちがいない、と私は流石に恥ずかしく思ったのである。
主人は、四十くらいで丸坊主である。太いロイド眼鏡をかけて、唇がとがり、ひょうきんな顔をしていた。十七、八の弟子がひとりいて、これは蒼黒く痩せこけていた。散髪所と、うすいカアテンをへだて、洋風の応接間があり、二三人の人の話声が聞えて、私はその人たちをお客と見誤ったのである。