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ろうふうふ

老夫婦

黒島 伝治

1925(大正14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,957 字 · 27 页

青空文庫

老人や子供達にはケンケンして不親切であったが、清三に金を送りに行った時だけは、何故か為吉にも割合親切だった。

両人は、それぞれ田舎から持って来た手提げ籠を膝の上にのせていた。

「そりゃ、下へ置いとけゃえい。」

自動車に乗ると清三は両親にそう云った。しかし、彼等は、下に置くと盗まれるものゝように手離さなかった。

「わたし持ちますわ。」嫁はそれを見て手を出した。

「いゝえ、大事ござんせん。」おしかは殊更叮寧な言葉を使った。

「おくたびれでしょう。わたし持ちます。」

「いゝえ、大事ござんせん。」おしかは固くなって手籠を離さなかった。為吉はどういう言葉を使っていゝのか迷っていた。

やがて郊外の家についた。新しい二階建だった。電燈が室内に光っていた。田舎の取り散らしたヤチのない家とは全く様子が異っていた。おしかはつぎのあたった足袋をどこへぬいで置いていゝか迷った。

「あの神戸で頼んだ行李は盗まれやせんのじゃろうかな?」お茶を一杯のんでから、おしかは清三に訊ねた。

清三は妻を省みて苦笑していたが、

「お前、そんなに心配しなくってもいゝよ!」と苦々しく云った。

「荷物は、おばあさん、持ってきてくれますわ。