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ろうぎしょう
老妓抄
岡本 かの子
「中央公論」1938(昭和13)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,601 字 · 31 页
莨入れを出して、煙管で煙草盆代りの西洋皿を引寄せて
「この頃、うちのみち子がしょっちゅう来るようだが、なに、それについて、とやかく云うんじゃないがね」
若い者同志のことだから、もしやということも彼女は云った。
「そのもしやもだね」
本当に性が合って、心の底から惚れ合うというのなら、それは自分も大賛成なのである。
「けれども、もし、お互いが切れっぱしだけの惚れ合い方で、ただ何かの拍子で出来合うということでもあるなら、そんなことは世間にはいくらもあるし、つまらない。必ずしもみち子を相手取るにも当るまい。私自身も永い一生そんなことばかりで苦労して来た。それなら何度やっても同じことなのだ」
仕事であれ、男女の間柄であれ、湿り気のない没頭した一途な姿を見たいと思う。
私はそういうものを身近に見て、素直に死に度いと思う。
「何も急いだり、焦ったりすることはいらないから、仕事なり恋なり、無駄をせず、一揆で心残りないものを射止めて欲しい」と云った。
柚木は「そんな純粋なことは今どき出来もしなけりゃ、在るものでもない」と磊落に笑った。
老妓も笑って
「いつの時代だって、心懸けなきゃ滅多にないさ。