轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
みみこうすい
耳香水
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,465 字 · 29 页
2
それも一度ではありません。それまで夫人と私は一面識もなかったのです。それがこの世を去る間際になって、つづけざまに、二度も三度も見るなんて――、全く不思議じゃありませんか。どうも前置きが大変長くなって済みませんでした。
2
遅い食事をやっと終り、コーヒーを一口喫んだ処へ、卓上電話のベルが慌しく鳴りました。私はコップを右手に持ったまま、急いで受話器を耳に当てますと、
『たったいま、南京街のキールン・ホテルで、人殺しがありました』
助手の声でした。馳け付けてみたところで仕方がない。公の職務にあるわけじゃないんですから、現場に入れてくれるか、どうか、それさえ分りません。が、しかし、キールン・ホテルの主人夫妻を私は知っているのです。というのは、この夫婦は以前私の親類の家に使われていたコックとアマなのです。忠実でよく働いたというので、ホテルを開業した時は勿論、その後も引き続いて何かと世話を焼いてやっているのです。そういう関係がありますので私から話してみたら、あるいは何かの便宜を与えてくれないものでもありません。大して興味もなかったのですが、せっかく知らせてくれた助手の手前もあるので、とにかく行ってみようと思い、ハーフ・コートを引掛けて家を出ました。