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ほどう
舗道
宮本 百合子
「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页
日本で、天然色トーキー映画フィルムをつくる。それが世界へ出て儲けは確実だというのだ。
余り話が簡単なんでミサ子は思わず……
「……だって、俳優を見つけたりするの大変でしょう? そっちはどうなるの?」と訊いた。
「ナニ、そんなことはどうでもなる」
「だって……スタアを引っこぬくのに大した金でしょう? それにいい監督だって買って来なくちゃならないし……」
「いや、それは何とかなります。十万円もする機械が何しろタダ手に入るんだから……」
ミサ子は義兄の云うことをきいているうちに鳩尾の辺がつめたくなるように感じた。才能のない、どこか足りなくはないかとさえ思われる太田は、失業で焦れば焦るほど××が巨大な資本の力で、儲けるのを見て来た癖で可能性のない儲妄想にかかっている。
「――義兄さん、退社手当随分どっさりおもらいんなったでしょう? みんな事業へつぎ込み?」
すると、太田の無表情な剃あとの青い顔に何とも云えない頑固な気色が浮んだ。
「――実はそのことじゃあ僕清水を怨んでるんです」
清水とは太田の従兄で、ボール・ベアリングの共同投資人なのだ。
ミサ子の驚いたことには、こういう話の間姉の文子がまるで無頓着なことだ。