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ほどう
舗道
宮本 百合子
「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页
一冊分の会費を払えば順ぐりいろんな雑誌がよめるのでみんなによろこばれている。
不図ミサ子は思い出した。××商事につとめている順子と左翼劇場へ行く日をうち合わせるのは今日の約束だった。
ミサ子はエレベエタアで地階まで降り、電話で順子を呼び出した。
「もしもし、今どう?」
「直ぐならいいわ、いらっしゃいよ」
疾走する自動車が都会の風をまき起す。ミサ子は翻える臙脂色の裾を押え、ひろい、街路樹の植わった東京駅前の通りをつっきった。
すぐ前の舗道に沿って並んでいる幾台もの自動車のボディーはキラキラ日に照っているが、××商事の豪壮な石造の入口の奥は暗くひんやりして見える。
何段もの石段を小走りに登って、ミサ子は詰襟の受付に順子への面会を求めた。
左手に長い廊下がつづいている。そこに、後から光線をあびて順子の姿が黒く現れた。下を向いて何か紙片れのようなものを見ながらゆっくりやって来る。
ミサ子は執務時間中に来ているのだ。気がせく。
「ちょっと!」
声を殺してせいたが、勿論順子には聞えない。紙片れを事務服のポケットへしまったのを見すましてミサ子は、両手をゲンコにし、ランニングの恰好を真似して体の前で動かして見せた。