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ほどう

舗道

宮本 百合子

「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页

青空文庫

「これで番茶が一杯あったら申し分なしだのにね」

ミサ子のために席をゆずりながら、別に挨拶もしなかった三輪みどりが、紅を濃くぬった唇から煙草の煙をフッとふいて云った。

「菅さん、親切ついでにヤカンもこの次もって来てよウ」

「丸ビルにゃ、ヤカンなんぞいくらだってあるんだろう。一つかっぱらって来なヨ」

「――御冗談でしょう!」

長めな断髪にコテをあてて耳のまわりへ捲きあげ、みどりは、黄色い薔薇のような半衿に、派手な銘仙の着物を着ている。和服でも高く脚を組み、女同士より却って男の連中と気安げによく喋った。そういう点が講習生の中でも目立ち、女事務員と云っても、ミサ子たちの気風とはガラリとちがう。

菅は、だれをも分けへだてしない口調で昨夜近所のラシャ屋へ入った強盗の話をした。

「店の若いもんに追っかけられて、ものの十町と逃げないうちに、とっつかまちまいやがった。そいつったら、懐へデッかい自動車のラッパをもっていましたヨ」

「――何です? そのラッパは、ぬすんだんですか?」

「そいつはね、入ろうと思う家の前でそいつをブーブーやって『今晩は! 今晩は!』とやったんです」

詰襟服を着た少年の尾野が、