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ほどう

舗道

宮本 百合子

「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页

青空文庫

「どうしたんだね、佐田君がぶったおれたっていうじゃないか」

「アラ!」

ミサ子はびっくりした。

「ほんとですか」

「仕様がないよ。だから御婦人は……」

小走りにミサ子が沖本と洗面所へ行って見ると、ほんとだ。白いタイル張の床へじかに事務服を着たまんまの佐田はる子が倒れて、掃除掛の手拭を姉さんかぶりにした小母さんが、ヤッと七三に結ったはる子の頭だけ黒綿繻子の仕事着をきた自分の膝へ支えている。

「あら、あら、心配だワ、ちょいと! はる子さん! さ、のんで! これを飲んで!」

きたないのをわすれ、自分も床へ膝をついた岡本しづ子が真蒼になってコップについだ水を何とかしてのまそうとしているところだ。

三人ばかりの男の社員がかたまってそれを見ていた。

「それじゃ駄目だよ。歯をくいしばってるもん」

しづ子が、

「はる子さん! はる子さん!」

おろおろして気を失っている対手の帯の辺をゆすった。

「――口うつしがいいんだがねエ」

小母さんが云った。

「おい、平田! どうだ一つ!」

「ばか、人工呼吸すれば、脳貧血ぐらいすぐだヨ」

云うばっかりで誰も実際には手を出さないところへ、

「一体、どうしたんだ」