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まいひめ
舞姫
「國民之友第六拾九號」民友社、1890(明治23)年1月3日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,190 字 · 33 页
余が文書を受領して大臣の室を出でしとき、相沢はあとより来て余と午餐をともにせんといいぬ。
食卓にては彼多く問いて、我多く答えき。彼が生路はおおむね平滑なりしに、轗軻数奇なるはわが身の上なりければなり。
余が胸臆を開いて物語りし不幸なる閲歴を聞きて、かれはしばしば驚きしが、なかなかに余を譴めんとはせず、かえりて他の凡庸なる諸生輩をののしりき。されど物語のおわりしとき、彼は色を正して諫むるよう、この一段のことはもと生れながらなる弱き心より出でしなれば、いまさらに言わんも甲斐なし。とはいえ、学識あり、才能あるものが、いつまでか一少女の情にかかずらいて、目的なき生活をなすべき。いまは天方伯もただ独逸語を利用せんの心のみなり。おのれもまた伯が当時の免官の理由を知れるがゆえに、強いてその成心を動かさんとはせず、伯が心中にて曲庇者なりなんど思われんは、朋友に利なく、おのれに損あればなり。人を薦むるはまずその能を示すに若かず。これを示して伯の信用を求めよ。またかの少女との関係は、よしや彼に誠ありとも、よしや情交は深くなりぬとも、人材を知りてのこいにあらず、慣習という一種の惰性より生じたる交わりなり。