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えんしょ
艶書
山本 周五郎
「小説倶楽部」桃園書房、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,027 字 · 50 页
五
彼はそう説明したのだが、半兵衛はそうは思わないようであった。
「おれはそうは思わないな、おれにはどっちでもいいが」と半兵衛は云った、「この文章はふざけて書いたものじゃない、文章というやつはなかなかごまかせるものじゃないよ、――しかし、これだけ想われていて、相手の見当がつかないというのは迂愚なるもんだね」
「自分でもそう思いますよ」
「女遊びをしたことがないんだろう」半兵衛はこう云って立ちあがった、「おれがこれから新柳町をおごってやる、兄貴にそう云って着替えて来いよ」
断わっても承知しないらしい。出三郎はかなり迷惑だったが、しかたなしに母屋へ着替えにいった。
五
つれてゆかれたのは、新柳町の「角万」という料亭であった。角万は第一流で、おもに藩の重役とか大商人などを客にしている。松屋川の河岸に面して、別棟になった離れ屋も三棟ばかりあった。半兵衛は芸妓を五人あげ、「この男はまだ女の肌を知らないんだ」などと云って出三郎を紹介した。
「この中でわれこそと思うやつは口説いてみろ、口説いてものにしたら褒美をやるぞ」
妓たちはきゃあっと声をあげ、いっせいに出三郎を取り巻いた。