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えんしょ
艶書
山本 周五郎
「小説倶楽部」桃園書房、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,027 字 · 50 页
年が明けて二月、旧重職のうち五名が処罰された。村山享書は永蟄居、食禄半減。野口行之助は改易、和泉図書は親族預け、食禄三分の一減。笠井十兵衛は永蟄居、食禄半減。その他――ということであった。これがすむと、まだ半兵衛を無役のまま残して、長門守宗寿は参勤のため出府した。
出三郎は最後の報告調書を持って、半兵衛をその家に訪ねた。三月になったばかりの、暖かい午後で、掬水楼からこっちずっと会っていなかったのである。
「やあ、あのときはありがとう、忙しくって礼にゆく暇もなかった」半兵衛はこう云って自分の頬を叩いた、「このとおりやせてしまった、なにしろ酒もゆっくり飲めなかったんだからな」
「城代家老はだめだったんですか」
「この夏だ、殿が在国ちゅうではまずいんでね」
「それはまたどうしてです」
「どうしてって、殿の袖に隠れて城代になった、などといわれるに定ってるからさ」と半兵衛は不敵に微笑した、「おれは五老職の処罰も殿が出府されたあとでやりたかったんだ」
出三郎は半兵衛の自信の強さに圧倒されるようであった。調書をわたして帰るとき、半兵衛は玄関まで送って来て云った。
「夏にまた少し役替えがある。