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はなのさくまえ
花の咲く前
小川 未明
「お話の木」1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,442 字 · 13 页
二
「きょうは、どうなるだろうか?」
彼は家にじっとしていられませんでした。ちょうど叔父さんが、店にいなかったので、幸吉は、酒屋の前の空き地の方へ走っていきました。
二
子供たちは、空き地に積んである砂利の上へ登ったり、空き箱の上にすわったりして、紙芝居のおじさんを取り巻いていました。自転車の上の小さな箱の舞台の中には、見覚えのある赤トラの絵が出ていました。七、八人も子供があめを買わなければ、おじさんは、説明をはじめないのが常でありました。
「まだはじめないかなあ。」と、待ちくたびれて、いっている子供もありました。
自転車に乗って、そばを通りかけた小僧が、わざわざ自転車を止めて、子供たちの中にまじって、おじさんの説明をきこうとしているのも見受けられます。
茶色の古びた帽子を斜めにかぶった、口ひげのあるおじさんは、なんとなくずるそうな目つきをして、自分のまわりに立っている子供たちの顔を見まわしました。そして、心の中で、いつもくる子供たちがみんな集まったかと、一人一人の顔をしらべているようにも見られました。おじさんは、いつも買ってくれる子供の顔は、よく覚えているのでしょう。