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はなさけるいし

花咲ける石

坂口 安吾

「週刊朝日別冊 第三号」1954(昭和29)年8月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,620 字 · 24 页

青空文庫

山崎は房吉に盃をすすめ、二杯重ねさせたのち、

「さて、お礼の肴を進ぜよう」

立って刀をぬき房吉の鼻先へ突きだした。もとよりユダンはしていない房吉、そのときはもう飛び退いて立っており、

「かたじけなく頂戴しましたが、さて、次のお肴は?」

悠然と四方をうかがっている。この時山崎の合図によって、一時にフスマをあけ放たれ、槍ナギナタの十数名が現われて房吉に迫ってきたが、房吉は彼らを制し、

「慌てることはござるまい。逃げも隠れもいたさぬ。だが、その肴を頂戴いたすのはこの房吉一人のはず。従者に肴はモッタイない。二名の者を帰させていただき、ゆるりと肴を頂戴いたしましょう」

二名の従者を邸外へ去らしめ、自身は庭へ降りて、刀も抜かずに突っ立って相手を待った。

山崎は槍ナギナタにまもられて庭へ降り、

「房吉。用意はいいな。師弟の縁によって、伊之吉の無念をはらしてつかわす。神道一心流の太刀、受けることができるかな。それ、存分に食うがよい」

太刀をふりかぶり、まだ房吉が刀も抜いていないから、これ幸いといきなり打ってかかった。その瞬間に房吉の刀はサヤをぬけて走った。

房吉が先に刀をぬいて相手の出を待てば、弓鉄砲の洗礼が先に来たかも知れぬところ。