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はなさけるいし
花咲ける石
「週刊朝日別冊 第三号」1954(昭和29)年8月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,620 字 · 24 页
運を天にまかせ、わざと刀をぬかずに出を待った房吉苦心の策。しかし、神技怖るべし。構えた刀をふり下した山崎よりも、刀をぬいて斬り返した房吉の剣が速かった。山崎の肩を斬った。山崎は肩から血をふいて、よろめいたのである。ただマがちょッとあきすぎていたから斬りつけたのは剣先で、致命傷には至らなかった。
槍とナギナタが一斉に迫ってきたが、房吉が要心を怠らぬのは、それではなくて弓鉄砲だ。竹矢来の外、そして頭上などに伏せてあるに相違ないのは大方見当がついている。その攻撃をそらすには竹矢来の外へでるのが何よりであるから、彼の心は刀をぬかないうちから竹矢来を越す方策に集中していた。房吉は逃げるとみせて、かいくぐり、敵の後へ走って竹矢来をとびこした。実に見事にとびこしたのだが、運のない時には仕方がない。とびこした竹矢来の外側が深田であった。すっぽりはまって進退の自由を失った。そこへ屋上から鉄砲の狙い射ち。一弾を股にうけ、益々進退の自由を失ったところを足軽組の竹槍なぞでメッタ突きに突き殺されてしまったのである。深田にはまらなければ、鉄砲の射程外へ逃れて存分に一泡ふかせ、あるいは房吉の勝利となったかも知れない。