轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はなび

花火

太宰 治

「文芸」1942(昭和17)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,233 字 · 29 页

青空文庫

「なんだ。」

母はどもりながらも電話の内容の一切を告げた。聞き終った父は、しゃがんで画筆を拾い上げ、再び画布の前に腰をおろして、

「お前たちも、馬鹿だ。あの男の事は、あの男ひとりに始末させたらいい。懲役なんて、嘘です。」

母は、顔を伏せて退出した。

夕方まで、家の中には、重苦しい沈黙が続いた。電話も、あれっきりかかって来ない。節子には、それがかえって不安であった。堪えかねて、母に言った。

「お母さん!」小さい声だったけれど、その呼び掛けは母の胸を突き刺した。

母は、うろうろしはじめた。

「改心すると言ったのだね? きっと、改心すると、そう言ったのだね?」

母は小さく折り畳んだ百円紙幣を節子に手渡した。

「行っておくれ。」

節子はうなずいて身支度をはじめた。節子はそのとしの春に、女学校を卒業していた。粗末なワンピースを着て、少しお化粧して、こっそり家を出た。

井の頭。もう日が暮れかけていた。公園にはいると、カナカナ蝉の声が、降るようだった。御殿山。宝亭は、すぐにわかった。料亭と旅館を兼ねた家であって、老杉に囲まれ、古びて堂々たる構えであった。出て来た女中に、鶴見がいますか、妹が来たと申し伝えて下さい、と怯じずに言った。