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ちゃのゆのてちょう

茶の湯の手帳

伊藤 左千夫

「馬醉木」1906(明治39)年1月、3月、10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,031 字 · 16 页

青空文庫

晩食が行われる、それぞれ身分相当なる用意があるであろう、日常のことだけに仰山に失するような事もなかろう、一家必ず服を整え心を改め、神に感謝の礼を捧げて食事に就くは、如何に趣味深き事であろう、礼儀と興味と相和して乱れないとせば、聖人の教と雖も是には過ぎない、それが一般の風習と聞いては予は其美風に感嘆せざるを得ない、始めて此の如き美風を起せる人は如何なる大聖なりしか、勿論民族の良質に基くもの多からんも、又必ずや先覚の人あって此美風の養成普及に勉めたに相違あるまい、

栽培宜しきを得れば必ず菓園に美菓を得る如く、以上の如き美風に依て養われたる民族が、遂に世界に優越せるも決して偶然でないように思われる、欧洲の今日あるはと云わば、人は必ず政体を云々し宗教を云々し学問を云々す、然れども思うに是根本問題にはあらず、家庭的美風は、人というものの肉体上精神上、実に根本問題を解決するの力がある、其美風を有せる歌人にあっては、此研究や自覚は遠き昔に於て結了せられたであろう、多くの人は晩食に臨で必ず容儀を整え女子の如きは服装を替えて化粧をなす等形式六つかしきを見て、単に面倒なる風習事々しき形式と考え、是を軽視するの趣あれど、そは思わざるも甚しと云わねばならぬ、斯く式広を確立したればこそ、力ある