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ちゃがゆのき
茶粥の記
矢田 津世子
「改造」1941(昭和16)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,568 字 · 30 页
足コも何もびっくりするべ」
姑は温泉行を楽しみにしていた。同じレウマチスで難渋していた裏の家王の老主婦が、先年信州の霊泉寺温泉へ湯治に行ってからというものぴったりと痛みがとまったという。その話を聞いていた姑の一生の念願に、全度帰郷の途次寄り道をすることになったのだった。
「足コが軽くなったら、なんぼう楽だべ。もうはあ、極楽だえ」
姑も清子も温泉へ行くのは初めてだった。姑は弾んでいるようにみえる。明日の楽しみをあれこれと話しかける。せっついて、しょっちゅう話しかける。まるで聞き手の清子を取り逃しでもするようなうろたえようである。そうした姑が清子には何か悲しかった。常は口の重い姑だけに、良人が亡くなってからこの方の軽口は悲しかった。それは清子に取り縋る感じで、まつわるように話しかける。
亡夫の初七日のとき郷里から出てきていた親戚の者の口から、ふと清子の再婚の話が出ると、姑もその場では同意したけれど、それからの落ちつきを失くした姿、おろおろした姿は清子の胸に沁みた。良人に逝かれてからというもの清子と姑の気持は一そう寄り添いあって、いわば二人はお互の突っかい棒になっていた。