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ちゃがゆのき

茶粥の記

矢田 津世子

「改造」1941(昭和16)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,568 字 · 30 页

青空文庫

年老いているだけに姑はよけいこの支えなしでは居られない。買い物で清子が少し手間どると、姑は露路口まで出て待っている。清子が外出の仕度をしだすと、うろうろと世話を焼きながら、ふと頼りない眼いろで見戌る。そうした姿に堰きとめられて清子は出難くなる。或夜のこと、厠へ立とうとした清子を突然姑が呼びとめて、

「何処さも行かないでけれせえ」

と声をしぼって取りすがった。悪い夢におびやかされたと後で分ったけれど、このことがあってから清子は尚のこと姑の側を離れないようにした。

子に恵まれなかった清子夫婦にとって、姑ばかりがその愛情の対象だった。よく良人のことを養子か入婿かと尋ねられたものだったけれど、人の眼にも姑と清子の仲はそれほどまでに映るらしかった。よく良人が冗談に、

「俺をそんなに放ったらかしにするなら、何処かへ行ってやるぞ」

と嚇かしたものだった。

それほどの姑を初めの頃は清子も少し恨んだことがある。良人が清子を妻にと望んだとき、シャゴマだからとけちをつけたのは他ならぬこの姑だったのである。シャグマの清子は後でそのことを良人から聞いて、とても口惜しい思いをした。