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ちゃがゆのき
茶粥の記
矢田 津世子
「改造」1941(昭和16)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,568 字 · 30 页
何んとなく良人の文章にふれたくない心で頁をめくった。家庭料理や小噺やユーモア小説などの盛り沢山な雑誌である。清子は「栄養漫才」というのを読んで、思わずクスッと笑いかけた。とうとう良人の文章にぶつかったとき、何か構える気がしどきっとした。
――今でも忘れられないのは初夏の広島の「白魚のおどり食い」だ。朱塗りの器、といっても丁度小タライといった恰好に出来ている器物だが、この中に白魚を游がしてある。よく身のいった、どれも三寸は越していようという立派なものだ。赤い器に白魚! 実に美しい対照だ。游いでいるやつをヒョイと摘まむんだが、もちろん箸でだ。なかなか、こいつが掴めない。用意してある柚子の搾り醤油に箸の先きのピチピチするやつをちょいとくぐらして食うんだが、その旨いことったらお話にならない。酢味噌で食っても結構だ。人によってはポチッと黒いあの目玉のところが泥臭くて叶わんというが、あの泥臭い味が乙なのだ。あの味を解さんで「白魚のおどり食い」とは不粋も甚だしい。この他、舌に記憶されているものでは、同じ広島で食った「鯛の生作り」と出雲名物の「鯉の糸作り」だ。鯛は生きのいい大鯛を一匹ごと食膳に運んでくる。