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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

十

「ここに留って、いるんですか」

「いいえ、兄の家におります」

「じゃ、わざわざ御茶を飲みに来た訳ですね」

「御茶より御白湯の方が好なんですよ。父がよせばいいのに、呼ぶものですから。麻痺が切れて困ったでしょう。私がおれば中途から帰してやったんですが……」

「あなたはどこへいらしったんです。和尚が聞いていましたぜ、また一人散歩かって」

「ええ鏡の池の方を廻って来ました」

「その鏡の池へ、わたしも行きたいんだが……」

「行って御覧なさい」

「画にかくに好い所ですか」

「身を投げるに好い所です」

「身はまだなかなか投げないつもりです」

「私は近々投げるかも知れません」

余りに女としては思い切った冗談だから、余はふと顔を上げた。女は存外たしかである。

「私が身を投げて浮いているところを――苦しんで浮いてるところじゃないんです――やすやすと往生して浮いているところを――奇麗な画にかいて下さい」

「え?」

「驚ろいた、驚ろいた、驚ろいたでしょう」

女はすらりと立ち上る。三歩にして尽くる部屋の入口を出るとき、顧みてにこりと笑った。茫然たる事多時。

十

鏡が池へ来て見る。観海寺の裏道の、杉の間から谷へ降りて、向うの山へ登らぬうちに、路は二股に岐れて、おのずから鏡が池の周囲となる。