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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

金屏にも、春風にも、あるは桜にもあしらって差し支ない道具である。余は天狗岩よりは、腰をのして、手を翳して、遠く向うを指している、袖無し姿の婆さんを、春の山路の景物として恰好なものだと考えた。余が写生帖を取り上げて、今しばらくという途端に、婆さんの姿勢は崩れた。

手持無沙汰に写生帖を、火にあてて乾かしながら、

「御婆さん、丈夫そうだね」と訊ねた。

「はい。ありがたい事に達者で――針も持ちます、苧もうみます、御団子の粉も磨きます」

この御婆さんに石臼を挽かして見たくなった。しかしそんな注文も出来ぬから、

「ここから那古井までは一里足らずだったね」と別な事を聞いて見る。

「はい、二十八丁と申します。旦那は湯治に御越しで……」

「込み合わなければ、少し逗留しようかと思うが、まあ気が向けばさ」

「いえ、戦争が始まりましてから、頓と参るものは御座いません。まるで締め切り同様で御座います」

「妙な事だね。それじゃ泊めてくれないかも知れんね」

「いえ、御頼みになればいつでも宿めます」

「宿屋はたった一軒だったね」

「へえ、志保田さんと御聞きになればすぐわかります。村のものもちで、湯治場だか、隠居所だかわかりません」