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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

旦那なんか知らねえはずさ。あすこに竜閑橋てえ橋がありましょう。え? そいつも知らねえかね。竜閑橋ゃ、名代な橋だがね」

「おい、もう少し、石鹸を塗けてくれないか、痛くって、いけない」

「痛うがすかい。私ゃ癇性でね、どうも、こうやって、逆剃をかけて、一本一本髭の穴を掘らなくっちゃ、気が済まねえんだから、――なあに今時の職人なあ、剃るんじゃねえ、撫でるんだ。もう少しだ我慢おしなせえ」

「我慢は先から、もうだいぶしたよ。御願だから、もう少し湯か石鹸をつけとくれ」

「我慢しきれねえかね。そんなに痛かあねえはずだが。全体、髭があんまり、延び過ぎてるんだ」

やけに頬の肉をつまみ上げた手を、残念そうに放した親方は、棚の上から、薄っ片な赤い石鹸を取り卸ろして、水のなかにちょっと浸したと思ったら、それなり余の顔をまんべんなく一応撫で廻わした。裸石鹸を顔へ塗りつけられた事はあまりない。しかもそれを濡らした水は、幾日前に汲んだ、溜め置きかと考えると、余りぞっとしない。

すでに髪結床である以上は、御客の権利として、余は鏡に向わなければならん。しかし余はさっきからこの権利を放棄したく考えている。