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「そうしあらい」をかいて

「草紙洗」を描いて

上村 松園

「大毎美術 第十六巻第十一号」1937(昭和12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,360 字 · 3 页

青空文庫

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わたくしの夢幻の国、思慕の華、それはつねにこの世の芸術の極致の境にひろがっている能楽です。わたくしは能楽をこそ人間界における芸術への一と筋辿るべき微妙な路だと思っています。

わたくしがこんどの文展に出品したのは能楽にある小町の“草紙洗”ですが、しかしこれは能楽そのものをそのままに取ったのではありません。小町の描出を普通の人物に扱ったものですから、画面の小町は壺織の裲襠に緋の大口を穿っているのは、能楽同様な気持ですけれども、その顔には面を着けてはおりません。ですが、面を能楽の面に型どっているところに、十分能楽味を保たしたわたくしの心持が表われているつもりです。この能楽に取材して、それを普通の人物に扱ったという点に、わたくしのある主張やら好みやらが含まれているわけです。

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わたくしはこの前の文展に、やはり能楽に関した“序の舞”というのを出品いたしましたが、あまり能楽がつづきますので、どうかと思う鑑賞家もいられるかと思いますが、そこがわたくしの能楽道楽なところでこういうものなら幾らでも描いてみたい希望をもっています。

一たい能楽というものは、全くの別天地です。