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そうし
荘子
岡本 かの子
「三田文学」1935(昭和10)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,362 字 · 25 页
彼女は我儘で勝手放題気にいらなければ貴顕の前で足を揚げ、低卓の鉢の白牡丹をその三日月のような金靴の爪先きで蹴り上げもした。興が起れば客の所望を俟たないで自ら囃を呼んで立って舞った。悲しみが来れば彼女は王侯の前でも声を挙げてわあ、わあ泣いた。涙で描いた眼くまの紅が頬にしたたれ落ち顎に流れてもかまわなかった。それから彼女は突然誰の前でも動かなくなり暫く恍惚状態に陥ることがある。何処を見るともない眼を前方に向け少しくねらす体に腕をしなやかに添えてそのままの形を暫く保つ――そなたは何を見て何を考えるのかと問う者があれば、わたくしは母のことを始め一寸想い出します。父が讒せられた後の母は計られない世が身にしみて空を行く渡り鳥の行末さえ案じ乍ら見送りました。でも、その苦労性な母を思ってわたくしは、そんな苦労は、いや、いや、わたくしはわたくしの有りのまま、性のままこの世のなかを送りましょう、と直ぐ思い直すとそれはそれはよい気もちになり恍惚として仕舞います――、と彼女はあでやかに笑うのであった。その申訳は嘘かまことかともかく麗姫のその状態を人々は「麗姫の神遊」と呼んで居る。