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くさもみじ
荷風随筆集(下)
永井 荷風
永井荷風『荷風随筆集(下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:草紅葉、西瓜、梅雨晴、正宗谷崎両氏の批評に答う、裸体談義。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,512 字 · 63 页
戦争前、カフェー汁粉屋その他の飲食店で、広告がわりに各店で各意匠を凝したマッチを配布したことがある。これを取り集めて丁寧に画帖に貼り込んだものを見たことがあった。当時の世の中を回顧するにはよい材料である。戦後文学また娯楽雑誌が挿絵といえば女の裸体でなければならないように一様に歩調を揃えているのも、後の世になったらむしろ滑稽に思われるであろう。
舞台で女の裸体を見せるようになった事をわたくしが初めて人から聞伝えたのは、一昨年(昭和廿二年)の秋頃、利根川汎濫の噂のあった頃である。新宿の帝都座で、モデルの女を雇い大きな額ぶちの後に立ったり臥たりさせ、予め別の女が西洋名画の筆者と画題とを書いたものを看客に見せた後幕を明けるのだという話であった。しかしわたくしが事実目撃したのは去年(昭和廿三年)になってからであった。
戦争前からわたくしは浅草公園の興行界には知合の人が少くなかった。浅草の興行街は幸に空襲の災難を免れていたので映画の外に芝居やレビューも追々興行されるようになったから、是非にも遊びに来るようにと手紙をもらうことも度々になったので、去年の正月も七草を過ぎたころ、見物に出かけた、その時木馬館の後あたりに小屋掛をして、裸体の女の大勢足をあげて踊っている看板と、エロス祭と大書した札を出しているのがあった。