轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きくちよしょう

菊千代抄

山本 周五郎

「週刊朝日春季増刊」朝日新聞社、1950(昭和25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,178 字 · 72 页

青空文庫

こんなふうに云って、眼をぎょろっとさせて、赤くふくれたような顔になるのであった。しばしば樋口次郎兵衛に告げ口もするらしかったが、じいの小言は穏やかで、さしたることはないのでこわくはなかった。

「黙れしぶ柿、おまえなんぞ黙って付いていればいいんだ、なまいきだぞ」

菊千代はどなりつけて殴ったりすることもあった。けれども半三郎に注意されるばあいだけは、ふしぎなくらいにいうことをきいた。彼はたいていのことは黙って見ている、高い樹の枝へ登ったりしても、心配そうな眼で、下からじっと見まもっているが、柿沼のように喚いたり騒いだりしない。むしろあとになって、高い枝へ登ったらすぐに片足をこう絡めとか、手は拇指を離してこう握れなどと教えて呉れる。そしてよほど眼に余るときだけ、それもあとからそっと注意する。

「いけません若さま、あれはおやめ下さい」

静かな眼でこちらを見て、低い声でそっというのである。それを忘れて菊千代が同じことをすると、彼は黙ったまま悲しげにみつめるのであった。その悲しげな表情は類のないもので、菊千代は泣きたいような気持になり決して三度とは同じあやまちをすることはなかった。