轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
きくちよしょう
菊千代抄
山本 周五郎
「週刊朝日春季増刊」朝日新聞社、1950(昭和25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,178 字 · 72 页
……そうして菊千代が十八歳になった正月、いつもの例で上屋敷へ祝儀にゆくと、貞良はうちとけた相談をするという調子で、こちらの眼をやさしく見ながらいった。
「やっぱり男でとおすつもりか、女になる気はないか、意地をぬいて正直にいってみないか」
菊千代は父の眼をみつめたまま黙っていた。答える必要がなかったのである、いまさらなにをという気持だった。貞良はその凝視に耐えられず、絶望したように眼をそらした。
巻野家はひたちのくに嵩間領で八万三千石だった。菊千代は二十歳の年、そのうちから八千石分封して貰った。浜町の中屋敷と、別家遠江守の屋敷とのあいだに、彼女のための屋敷が出来、また嵩間領の中山という処に屋形と領地事務のための役所が建った。
新しい屋敷では、樋口次郎兵衛が付家老というかたちで、側にはやはり松尾のほかに女を置かず、近習は三人の少年のうち、才はじけた末次猪之助をやめて、矢島弥市という少し鈍感な少年を貰った。……八千石の館主ではあるが任官しないので、公式には最小限の義務しかなく、家臣も江戸と中山の領地を合わせて、せいぜい四十人を出入りするくらいのものだった。