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おちたままのネジ
落ちたままのネジ
宮本 百合子
「時事新報」1936(昭和11)年10月6~8日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,144 字 · 9 页
「左翼文学が今日沈潜期にあることを思って喧嘩すぎての棒ちぎりといった疚しさを抱かせられたが」云々と、石坂氏は対象を或る種の左翼的作家、或は思想運動者の上にだけ置いて物を云っているように見える。けれども日本の左翼運動の歴史的な退潮の原因は単にそういう一群の生活の裡にのみ在ったのであり、又敗北の結果は単にその一群の生活の上にだけ降りかかって終るものであろうか。
今日作家が一般的に、こういう面でのみ闊達であり得るということについては、慶賀すべきか、或は憤ってしかるべきことなのであろうか。
大森義太郎氏の「思想と生活」(文芸)には、「麦死なず」に対する批判的感想として、正しい思想はよしんば各個人の実生活における態度と一致していないでも、思想そのものとして、実生活と一致している低俗な思想より価値が高いということを、主張されている。これは、「麦死なず」に於て、五十嵐が牧野を酷評するモメントを、その意識的思想と実際の生活感情の乖離においていることに対して、のべられているのである。
石坂氏の「悪作家より」とこの大森氏の感想文とをあわせ読み、私は、日本における左翼運動が、世界独特な高揚と敗北の過程をとっている、その一般的な歴史的素因の複雑さを、裏からはっきりと、透して見せられたように感じた。