轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
「大阪毎日新聞 夕刊」1928(昭和3)年12月3日~1929(昭和4)6月17日<br>「東京日日新聞 夕刊」1928(昭和3)年12月3日~1929(昭和4)6月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,066 字 · 216 页
と訴えているらしいのが分ると、それが何がなしに癇に触れてならなかった。
「廊下を一と廻り運動して来たらどうかね」
と、老人が云った。
「廊下に何か面白いものでもあって?」
半分皮肉に云いかけてから、彼女は冗談に紛らしながら、
「あたしも大阪の芸術には降参しちゃったわ。たった一と幕だけでお父さん以上に降参したわ」
「ふふ」
と、お久が鼻の奥で笑った。
「どうなさる? あなた、―――」
「さあ、僕は孰方でもいいんだが、………」
要の方は要の方で、例のあいまいな返辞をしながら、今日に限ってそうしつッこく「帰る帰らない」を問題にする妻の態度に、淡い不満を蔽い隠すことが出来なかった。自分も彼女が長居をしたくないことは知っている、云われないでも潮時を見て器用に切り上げるつもりだけれども、折角呼ばれて来ているものを、せめて父親の手前だけは機嫌よくして、夫の処置に任せてくれたら、―――それくらいは夫婦らしく、気を揃えてくれたらいいのに。
「今からだと、ちょうど時間の都合もいいし、―――」
彼女は夫の顔色には頓着なく、七宝入りの両蓋の時計をキラリと胸のところで開いた。
「来たついでだから、松竹へ行って御覧にならない?」