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そばのはなのころ
蕎麦の花の頃
李 孝石
「文学案内」1937(昭和12)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,494 字 · 16 页
随分勝手だわ、同じ客同志なのに、若いからって息子同様の相手をとらえて意見したり乱暴したりするほうってないわよ。忠州屋は唇を可愛くひんまげ、酒を盛る手つきも荒々しかったが、若えものにゃあその方が薬になるだよと、その場は趙先達がうまくとりつくろってくれた。お前、あいつに首ったけだな、若えのをしゃぶるなあ罪だぜ。ひとしきり敦圉いた後とて度胆も坐ってきた上に、なぜかしらへべれけに酔ってみたい気持もあって、許生員は差される盃は大抵拒まなかった。酔が廻るにつれ、しかし女のことよりは若者のことが一途に気になってきた。儂風情が女を横取りしてどうなるというのだ、愚にもつかないはしたなさを、はげしくきめつけるこころも一方にはあった。だからどれほど経ったか、童伊が息をきらしながら慌てて呼びに来た時には、飲みかけの盃を抛り、われもなくよろめきながら、忠州屋をとび出したのだった。
――生員の驢馬が、綱をきってあばれ出したんだ。
――餓鬼共のいたずらに違いねえ。
驢馬もさることながら、童伊の心掛けが胸にしみて来た。すたこらすたこら衢をぬけて走っていると、とろんとした眼が熱くなりそうだった。