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ふじだなのかげから
藤棚の陰から
寺田 寅彦
「中央公論」1934(昭和9)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,285 字 · 17 页
つまり茎の上端が「り」の字形になったわけである。
もっと詳しくいろいろ実験したいと思っているうちに花期が過ぎ去った。そうしてその年以来他の草花は作るが虞美人草はそれきり作らないので、この無慈悲な花いじめを繰り返す機会に再会することができない。
四
カラジウムを一鉢買って来て露台のながめにしている。芋の葉と形はよく似ているが葉脈があざやかな洋紅色に染められてその周囲に白い斑点が散布している。芋から見れば片輪者であり化け物であろうが人間が見るとやはり美しい。
ベコニア、レッキスの一種に、これが人間の顔なら焼けどの瘢痕かと思われるような斑紋のあるのがある。やけどと思って見るとぞっとするくらいであるがレッキスとして見れば実に美しい。
アフリカの蛮人でくちびるを鐃のように変形させているのや、顔じゅう傷跡だらけにしているのがあるが、あれはどうもどう見ても美しいと思えない。あれでもやはりまだあまりに多くわれわれに似すぎているからであろう。
ほんとうに非凡なえらい神様のような人間の目から見たら、事によるとわれわれのあらゆる罪悪がみんなベコニアやカラジウムの斑点のごとく美しく見えるかもしれないという気がする。