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らん
蘭
山本 周五郎
「家の光」1948(昭和23)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,247 字 · 21 页
二
自然、日常の挙措も、こころがまえも、ほかの青年たちとは違ったし、なにを見、なにを考えるにも、藩の将来と結びつけないためしはなかった。
しかし、やがてこういう濁りのない、まれな友情をもってしても、どちらかが傷つかなければすまない事が起った。
それは中原松子というむすめの登場に始まる。
二
松子は中原良太夫のむすめだった。中原は須川家の遠縁にあたるので、良太夫とその妻が、あい前後してなくなるとすぐ、生之助の父兵左衛門が、かの女を家にひきとった。不幸な境遇のためだろうが、はじめは口数の少い陰気な子だった。十三四になるまで、いつもひとりで、べそをかいているというふうだったが、やがて背丈の伸びるにしたがって、顔だちも明るく身ぶり声つきも、きわだって美しくなった。
平三郎と生之助が、その変化に気づいたのはほとんど同じころである。同時に、おたがいが引きつけられている感情のふかいこともわかった。こういう関係はまれでもなく、しばしば愚かしい結果をまねく例も知っているので、ふたりは必要以上に慎みとおした。もちろん、そういう状態が永くつづくものでないこと、いつかは苦しい瞬間に当面しなければならぬということは、わかっていた。