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とらがり

虎狩

中島 敦

「光と風と夢」1942(昭和17)年7月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,260 字 · 48 页

青空文庫

一行はしばらく其の足跡について、木立の中を、前後に怠りなく注意を配りながら進んで行った。まもなく其の足跡が林間のもう一つの空地へ導いて行った時、私達はその林のはずれに、多くの裸木に交った二本の松の大木を見つけた。案内人達はしばらくその両方を見比べていたが、やがて、そのくねくね曲った方の一方に攀じのぼると、背中に負って来た棒や板や蓆などを、その枝と枝との間に打付けて、忽ち其処に即製の桟敷をこしらえ上げて了った。地面から四米ぐらいの高さだったろう。その中へ藁を敷詰めて、そこで私達は待つのだ。虎は往きに通った途を必ず帰りにも通るという。だから、その松の枝の間にそうして待っていて虎の帰りを迎え撃とうというのだ。三本の曲った太い枝の間に張られた其の藁敷の桟敷は案外広くて、前に言った私達四人の他に、二人の猟師もそこへはいることが出来た。私はそこへ上った時、もう、少くとも後から跳びかかられる心配はなくなったと考えて、ほっとした。私達が上ってしまうと、勢子達は犬を連れ、各々銃を肩に、松明の用意をして、何処か林の奥に消えて了った。

時は次第に経つ。雪の白さで土地の上はかなり明るく見える。