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とらがり
虎狩
「光と風と夢」1942(昭和17)年7月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,260 字 · 48 页
しまいには教師までが口のあたりに薄笑いを浮かべる始末だ。私はすっかり厭な気持になって了って、その時間が終ると大急ぎで教室を抜け出し、まだ一人も友達のいない運動場の隅っこに立ったまま、泣出したい気持でしょんぼり空を眺めた。今でも覚えているが、その日は猛烈な砂埃が深い霧のようにあたりに立罩め、太陽はそのうす濁った砂の霧の奥から、月のようなうす黄色い光をかすかに洩らしていた。あとで解ったのだけれども、朝鮮から満洲にかけては一年に大抵一度位はこのような日がある。つまり蒙古のゴビ砂漠に風が立って、その砂塵が遠く運ばれてくるのだ。その日、私は初めて見るその物すさまじい天候に呆気に取られて、運動場の界の、丈の高いポプラの梢が、その白い埃の霧の中に消えているあたりを眺めながら、直ぐにじゃりじゃりと砂の溜ってくる口から、絶えずペッペッと唾を吐き棄てていた。すると突然横合から、奇妙な、ひきつった、ひやかすような笑いと共に、「ヤアイ、恥ずかしいもんだから、むやみと唾ばかり吐いてやがる。」という声が聞えた。見ると、割に背の高い、痩せた、眼の細い、小鼻の張った一人の少年が、悪意というよりは嘲笑に充ちた笑いを見せながら立っていた。