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きょこうのはる

虚構の春

太宰 治

「文学界」1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页

青空文庫

仏典に申す『勇猛精進』とはこのあたりの決心をうながす意味の言葉かと思います。実は参上して申述べ度きところでありますが、貴兄も一家の主人で子供ではなし、手紙で申してもききわけて頂けると信じ手紙で申します。どこか温い土地か温泉に行って静かに思索してはいかがでしょう。青森の兄さんとも相談して、よろしくとりはからわれるよう老婆心までに申し上げます。或いは最早や温泉行きの手筈もついていることかと思います。温泉に引越したら御様子願い上げます。北沢君なんかといっしょに訪ね、小生もその附近の宿にしばらく逗留してみたいと思います。奥さんによろしく。頓首。早川俊二。津島修治様。」

「三拾円しか出来ない。いのちがけ、ということをきいて心配いたして居りますが、どんなんですか。本当は二十日ごろまでに、兄より何か、委細のおしらせあるか、と待って居たのですが。(一行あき。)こうして離れているとお互いの生活に対する認識不足が多いので、いろいろ困難なことにぶつかると思います。命がけというので、お送りするわけです。それも私の生活とても決して余裕がないので、サラリイの前がりをして(それも、そんなに多くは前貸はしない、)やるわけです。