轻松读懂日语经典作品
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ちょうのえ
蝶の絵
久生 十蘭
「週刊朝日別冊 記録文学特集号」1949(昭和24)年9月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,644 字 · 49 页
山川の顔は、神経質な男によくある正直な顔なので、感情がのこらず丸見えになってしまう。いったい友愛と平等とは、絶対に一致しないもので、五十いくつの顔を、過不足なしに、平等に見るということはできない。それで、教室にいる間は、眼がわるいわけでもないのにうすい色のついた眼鏡をかけ、視線を曖昧にぼかしてしまうという手のこんだ保身の術をやり、ただのいちども波風を起こさずにすました。
戦争や恋愛ばかりではなく、はげしいもの、異様なものは、なにによらず山川の敵なので、たとえば恋愛にしても、血統や、家柄や、穏やかな家族や、趣味のいいサロンや、洗煉された会話や、節度のある作法などの背景無しでは考えられない山川が、どこの馬の骨ともわからぬ混血娘などと、焼跡の野天をほっつきまわるなんてことがあろうはずがない。聞いただけで、軽く笑い流してしまったが、そのうちに須田が、常磐線の土浦駅のホームで、そういう二人を見たといいだした。それも、生仲なものではなく、娘は山川の首に両腕を投げかけ、絶えいるようになにかささやき、山川の頬を撫で、接吻し、凄艶といおうか愴美といおうか、直視するに忍びない纒綿たる情景だったということだった。